◆pgでベトナム展

 東京は新宿のphotographers’ gallery で4年振りの個展を開く。昨年の終盤、30年振りにベトナムを訪れたので、30年前のネガやベタを見直し始めた頃にそういう話になった。ベトナムに関しては30年後というキリのいいときにやれればとは漠然と思っていて、再訪越はキリのいい年に叶った。展示となると準備もあるし、キリのいい年にというわけにはいかなかったが、ようやく準備が大きな山をいくつも越えて、こうしてお知らせできるまでになったので、取りあえずひと安心という現状です。

 30年前の写真の撮影はモノクロが中心で、これまた久々にモノクロの暗室を季節のいいときにやることができた。自分の暗室で大全紙までは焼いているとはいえ、現像のプロセスは機械がやってくれるカラーの場合はあまり当てはまらないのだけれど、モノクロの場合、季節によってこんなにも暗室がストレスになったり楽しみになったりするとは、というくらいベストシーズンというものがある。
 他にビデオをかなりの量撮っていた。VHSのコンパクトビデオカメラで、当時ソニーが出していた「ベータカム」に対抗してビクターが手がけた一体型の小型ビデオカメラである。小型とはいえ今のものとは比べ物にならないくらい重くて大きい。1本20分なので、計画的に撮らないとならない。もっと前に映画のカメラをやったことがあるのだけれど(学生時代の自主映画)、それは1本3分ちょっとであったから、さらに計画的でなければならず、コマ割りなどで事前にだいたいの構想を固める必要があった。ビクターのビデオを最初に使ったときは、そういう不自由さがなかったので、逆に緊張感がなくなるねなどと仲間と話したものだが、今のデジカメは持っていることを忘れるくらいに軽いし、撮った分は小さなカードに収まっているし、それなのにほぼキリなく撮れてしまうので、この20分は程よい緊張感と達成感、充実感をもたらしてくれるいい設定ではなかったかと思う。

 そんなコンパクトビデオカメラを担いでホーチミンからハノイまで北上した分を、プロの手を借りながらやっと繋いで書き出したところである。まずはビデオテープを編集可能なDVDに移すところからだったので、思えば長い作業ではあった。20本ほどあったし、また他の時期にも2度訪越しているのだけど、あれもこれもだと散漫になるので、それらにはひとまず目をつむることにして、北上に限定し時系列でやると決めたので、思いのほか作業はスムーズにいった。会場は2つの部屋があり、1つはこのビデオとデジカメで撮影した新しい動画(動画とビデオという使い分けが分かりにくいかもしれないけれど、昔のビデオテープで撮影したものはビデオとしか表現できないのでご容赦を)の上映、もう1つの部屋は新旧取り混ぜての展示(20点)という構成。
 30年前の写真を見直したのも初めてなら、こんなにいろんな作業(カラーとモノクロの暗室、ビデオと動画編集、16ページの冊子の編集、それに入れる文章)を一度に並行して進めたのも初めてで、いま展示に向けての最終コーナーを味わいながら過ごしているのを幸福と言わなければバチが当たる、ということなのでしょうね。